こんにちは、個別指導Wam藤の木校です。
6月にブログで「宇宙人はいるか」を書きました。結論として、いるだろうけど「宇宙の地平線」があるためお互い交信はできないだろう、としました。
じゃあ宇宙ってそもそも、どういう構造になっているのだろう、という疑問が生じます。
今回は、ここ十数年でわかってきた宇宙の構造と、わかってきたからこそ逆に新たにわからなくなってきた、宇宙の黒幕についてのお話です。
地球からカメラを引いて宇宙をズームアウトしていくと、太陽系になり、天の川銀河になり、銀河が連なる銀河団になり、超銀河団になり・・・と、宇宙は階層的な構造をしていて、小さなものがより大きなものの一部になっている、ということを繰り返しています。
そこまでわかったとき、当時の宇宙科学者は「宇宙というのはどこまで大きく見ても無限に構造があるに違いない」と考えていたし、かくいう私もそう思っていました。この考え方を「フラクタル宇宙観」といい、「人は先が見通せないものに出会うと無限を持ち出してしまう傾向がある」のだそうす。
でも精密な観測と研究を進めていくと、どうやらこの階層構造には限りがあり、無限の構造にはなっていないことがわかってきました。
銀河や銀河群、銀河団は、それぞれ孤立しているのではなく、鎖状につながっています。この鎖状の構造を「フィラメント構造」といいます。一方、銀河がほとんどないか極めてまばらにしか存在しない場所を「ボイド」といいます。
宇宙は、ボイドを囲むように多数の銀河がシート状に分布していて、シートの交わるところがフィラメント状になっています。さらにフィラメントが交わるところが銀河団や超銀河団になっています。
ちょうど、石鹸水にストローで空気を吹き込むとブクブクとたくさんの泡ができている状態に似ていることから、宇宙のこの様子を「宇宙の泡構造」と呼ばれています。
宇宙の泡構造を超えるスケールには、大きく目立つ構造は見られません。極めて広い範囲(何十億光年くらい)で平均して見たら、宇宙はどこも同じような構造をしています。そのため宇宙の泡構造は「宇宙の大規模構造」とも呼ばれています。
大規模構造がわかれば、宇宙はもう明らかになったよね、と思いたいところですが、そうとは言えません。宇宙に関わる大きな謎として代表的なのが「ダークマター」と「ダークエネルギー」という、二つの黒幕(ダーク)です。
「ダークマター」「ダークエネルギー」、それぞれどういうことなのでしょうか。
ダークマター(dark matter、暗黒物質)とは、天文学的現象を説明するために考えだされた仮説上の物質のことです。目では(観測しても)見えないのに重力だけを持つ物質なので、今のところダークマターの正体は不明です。でも見えないのになぜ存在しているとわかるのでしょうか。
ダークマターの存在の証拠は三つあります。
一つは、銀河の速度が銀河団の全質量から求めた速度よりも大きいこと。また、銀河の回転速度が銀河の外側でも速度が減少しない(まとまって動いている)ことです。これは、光では観測できない未知の物質がないと説明できない、となります。
一つは重力レンズ効果による観測です。重力レンズ効果とは、非常に重い物質(=大きな重力)があると光が曲げられてしまうことなのですが、その重力レンズ効果で観測した像に、見えないはずのものまで見えているのです。これはダークマターを考えないと説明しにくいのだそうです。
あと一つは、密度の濃淡の差です。この宇宙には星が集まっているところとまばらなところ、つまり密度に濃淡があるのですが、その差が計算より大きすぎるのです。これもまた、ダークマターが存在すると考えると説明できるのだそうです。
ダークマターの量は、陽子や中性子などの「目に見える(観測されている)」通常物質よりも5倍ほど多いとされています。
ダークマターは光とぶつかり合わないので光学的に直接観測できず、さらに通常物質とも、ダークマター同士でもぶつかり合わず、電荷ももっていません。変化もせず安定で、重力だけを感じることができます。銀河の周りにはダークマターが銀河よりも大きく広がっていて、銀河団の中はダークマターに満ちています。
銀河団と銀河団の衝突を観測すると、衝突したところにはガスの塊ができます。このガスは通常物質である原子や分子でできていて、光や自分自身と相互作用します。ところが、ダークマターは他の粒子や自分自身と相互作用をしないので、すり抜けて二つの塊となるのです。何とも不思議です。
ということは当然、私たちの身の回りにもダークマターはあるはずで、1リットル当たり1個くらい存在すると言われています。ダークマターは今この瞬間にも、私たちの身体をすり抜けて飛んでいる・・・にも関わらず、いまだ実験的に直接捕えられていません。
ダークマターは、現在われわれが知っている素粒子では説明ができないので、新しい理論に基づく未発見の素粒子が必要となっています。その有力候補の一つがニュートラリーノと呼ばれる素粒子で(ニュートリノとは別です)、理論的に存在が強く期待されています。
さて、ダークマターが観測結果をもとにして「発見」されたので、ダークエネルギーもそうだろうと思うかもしれません。ですが、どちらかいうとダークエネルギーはもっと大雑把に、理屈の辻褄合わせの産物、と言っていいでしょう。
宇宙が通常物質やダークマターで満たされているとすると、宇宙全体はだんだん小さくなるはずです。でも現在、宇宙は膨張しています。ということは「今は膨張しているかもしれないがだんだん遅くなっていくに違いない」と思われていました。
ところが、「ハッブル宇宙望遠鏡」で有名なハッブルが1929年に銀河の赤方偏移(遠ざかってみえる観測結果)を発見しました。つまり、宇宙は収縮するどころか加速膨張しているということが明らかになったのです。
さあたいへん。宇宙の膨張が加速しているなんて辻褄が合わない。宇宙を膨張させている、物質ではない「何か」があることになります。
そのよくわからない「何か」を仕方なく「ダークエネルギー」と名付けたのです。
ダークエネルギーは、ダークマター以上に“とりあえず”感がありますよね。
ダークエネルギーを想定すれば、真空に莫大なエネルギーがあることになります。でも実際の真空にはそのようなエネルギーはありません。でも宇宙は膨張している。なぜなんだ、わからない。わからないけど仮に「ダークエネルギー」としておくしかないのです。
ダークマターもダークエネルギーも、名前がついているからといって正体がわかっているわけではありません。
人の病気も、名前がついているからといってその病気の正体が医者にわかっているとは限りません。例えば心不全は、日本人の代表的な死因のひとつですが、心臓が全身に十分な血液を送り届けることができなくなった状態をいっているに過ぎません。どうして血液を送れなくなったのか、その原因を特定することは難しいとされています。
とはいえ、人の病気も、ダークマターもダークエネルギーも、名前がついていると何となく安心して、わかった気になるものです。
この話を聞いて、少しでも宇宙に興味をもってもらえると嬉しいです。
【参考】
松原隆彦「図解宇宙のかたち 「大規模構造」を読む」光文社新書