こんにちは、個別指導Wam藤の木校です。
アメリカがイランに戦争を仕掛け、ホルムズ海峡が封鎖された結果、ナフサと言われる原料が市場から消えつつあり、生活に影響を及ぼしかねない・・・というニュースが最近飛び交っていました。
でもナフサってなんでしょうか? 今回はナフサのお話です。
石油を地下から発掘したままの液体を原油といいます。原油は有機化合物の混合物で、炭素の数が少ないものから多いものまでさまざまな種類の有機物が混ざり合っています。炭素の数が少ないほど沸点が低く、炭素の数が多いほど沸点が高いため、炭素の数の違い(≒沸点の違い)によってガソリン/ナフサ/灯油/軽油/重油/アスファルトなどの石油製品はすべて分けられているのです。
その中で沸点がおおむね30〜180℃程度の軽質な石油成分をナフサといいます。
ナフサは直接消費者が使う製品ではありませんが、その用途は非常に広く、私たちの日常生活を支える製品の多くに関わっています。
ナフサを化学処理することにより、エチレン・プロピレン・ブタジエン・ベンゼンなどの「基礎化学品」が生産されます(基礎化粧品じゃないですよ?)。まあ中間生産品といってもいいでしょうか。
これらの基礎化学品は、さらに加工されて以下のような最終製品になります。
エチレン ポリエチレン(レジ袋・容器・包装材)・PVC(塩化ビニル管)など
プロピレン ポリプロピレン(食品容器・自動車部品)・アクリル繊維など
ブタジエン 合成ゴム(タイヤ・ゴム製品)など
ベンゼン ナイロン・ポリエステル・合成樹脂・洗剤など
つまり、私たちが日常的に使っているペットボトルやプラスチック容器、衣類、タイヤ、建材などなど、数え切れないほどの製品がナフサを出発点として作られているのです。
また医療や衛生用品にも関係しているのも、ナフサが大きな問題となっている背景があるでしょう。
これらのような石油などを原料にして作られる化合物を「合成高分子化合物」といいます。
「合成」ではないのは「天然」ですから、別に「天然高分子化合物」もあります。主に糖類やアミノ酸、タンパク質が「天然高分子化合物」です。
合成繊維やプラスチック、合成ゴムなどが「合成高分子化合物」になります。
合成高分子化合物の多くは「ポリ~」という名前がついていますよね。「ポリ~」は小さい化合物を繰り返し結合して大きな化合物にしたものです。
例えば、エチレンというのは小さい化合物ですが、エチレンを人工的にえんえん結合させてさせてさせて、くさり状にしたものがポリエチレンとなります。
合成ゴムも、別名ポリクロロプレンというので「ポリ~」のなかまですよね。
もう少し詳しくいうと「ポリ~」をつくる結合を「付加重合」といいます。
付加重合とは二重結合をもつ分子が付加反応を繰り返すことによって重合することです。
なんだか急に難しくなりましたね。ゆっくり確認していきましょう。
化合物は有機化合物と無機化合物に分けられます。大まかにいって炭素を含む化合物を有機化合物、炭素を含まない化合物を無機化合物といいます。まあざっくりいって、有機化合物と無機化合物の違いは、炭素が含んでいるかどうか、ということですね。
合成高分子化合物も天然高分子化合物も、全て有機化合物です。
有機化合物に含まれる炭素原子は、4本の腕をもっています。1本ずつ相手とつながることを「単結合」といいます。それだけなら簡単なのですが、炭素と炭素で2本ずつつながることもあり、それを「二重結合」といいます。
二重結合は、きっかけを与えてやれば2本の手を1本にして、離した手を別の化合物とつなぐことができます。これが「付加反応」です。
そして付加反応を繰り返していくのが「重合」です。
このように、炭素の2本でつながっていた結合を1本にして、もう1本を別の化合物と次々につないでいくことが「付加重合」なのです。
では基礎化学品であるエチレン・プロピレン・ブタジエン・ベンゼンって何が違うのでしょうか。
それも炭素の数の違いです。エチレンは2個、プロピレンは3個、ブタジエンは4個、ベンゼンは6個の炭素でできています。
全部二重結合があるのですが、エチレン・プロピレンの二重結合は1個なのに対し、ブタジエンは2個、ベンゼンは3個あります。
くさり状につながる有機化合物のうち、二重結合があるものを「アルケン」といい、語尾が「~エン」(エチレン・プロピレン・ブタジエン)になっています。逆に言うと、有機化合物で語尾が「~エン」のものに出会ったときには「二重結合があるのかな」と疑ってもいいかもしれません。
でもベンゼンは、同じ「~エン」ですが少し違い、6個の炭素が正六角形の頂点にある環状の有機化合物です。ベンゼンの二重結合は3個あると書きましたが、ベンゼンの二重結合はちょっと特殊で、単結合と二重結合の中間的な状態にあるのです。とはいえ付加重合は生じるので、ここでは3個の二重結合と考えて差し支えないでしょう。
以上、ナフサについて書いてきました。
石油(原油)がそのまま製品になるのではなく、まず沸点の違いによって分けられ、そのうちのわりと軽い石油成分がナフサでした。ナフサもまたそのまま製品になるのではなくて、エチレンなどの基礎化学品に分けられたのち、さらに化学処理を加えることにより多様な製品になっていきます。
現代の生活は、ナフサをはじめとした石油にこんなにも依存しているんですね。今回ホルムズ海峡が閉鎖されて初めて、ガソリン以外にも石油に頼っているんだということを実感させられました。
今回のお話は、だいたい高校の化学で習う内容です。難しく思われたかもしれませんが、高校化学でもこれだけのことをマスターできるということです。まだ高校にまで至ってない方、「高校化学ではこんな内容もするんだ」と、楽しみにしていてくださいね。
【参考】
ナフサからできるものは何?種類・用途・灯油やガソリンとの違いをわかりやすく解説
https://h-bid.jp/what-is-naphtha/
東京書籍「化学」H24検定
卜部吉庸(2013)「化学の新研究」三省堂