教室ブログ

2023.05.31

どこか変な雑草・スギナ

こんにちは、個別指導Wam藤の木校です。

 

今年の春は早かったですね。入学式の前に桜が満開を迎えて、道端にはタンポポやツクシが彩りを与えてくれていました。

富山県は体感的に雨が多いですが、逆に梅雨の時期をあまり感じないということを前向きに考えておきます。

 

華やかな花の季節が終盤を迎えたので、その後ろにある葉に注目してみましょう。「え、葉なんてどれも同じじゃん、だいたいどうせ雑草でしょ?」なんて言わずに、ぼんやりでもいいので眺めてみると、黄緑がかった同じような葉にもいろいろな形があることに気付くと思います。例えば平面的に放射状に広がる葉があったり、細くて長い葉だったり、細い茎に小さくついた多くの葉などなど・・・

いろいろありますが、ここではざっくり茎があるかないかで分類してみましょう。茎があるものはタンポポ、シロツメクサ(別名クローバー)、オオイヌノフグリ、茎がないものはオヒシバ、スズメノカタビラ、などと名付けられています。茎があるものを双子葉植物、茎がないものを単子葉植物といい、それら双子葉と単子葉を合わせて被子植物といいます。このように、道端に生えている雑草の多くがこの被子植物です。

ところが、同じように黄緑がかった色をしているのに、少し変な植物がいませんか。茎があるようでないようで、葉もあるのかないのか、そもそも葉なのか、遠目にはイネの仲間かなとも思いますが、近くで見ると全然違う。これはいったい何だ?

 

それはスギナという植物です。雑草といえば10位以内には入るだろうくらいメジャーな雑草なのですが、他の雑草と異なり茎もない/葉なのかどうかもわからない/花を付けているところも見たことないなど、見た目がまるで違います。察しの通り、被子植物ではないのです。

被子植物と似た植物に裸子植物があります。この裸子植物と被子植物を合わせて種子植物といいますが、スギナは種子植物でもありません。スギナは、シダ植物です。

「へー、そんなのあるかもしれないけど、見たことないなあ」という方、でもツクシは見たことがあるでしょう。ツクシはスギナの胞子茎で、ツクシの周りにはスギナがあります。

 

ツクシは早春に他の植物に先駆けて生えてきて、繁殖のため胞子を放出したあとは枯れます。その後同じ場所に高さ30~40cm前後の栄養茎(スギナ)が生えます。

ツクシは春の山菜として親しまれているので、茹でて食べたこともあるかもしれませんが、スギナも健康茶のひとつとして飲用されます。体調を整える効果があるのですが、ただ心臓や腎臓に疾病のある人などには禁止されているそうです。

 

双子葉と単子葉の被子植物が競っている中、シダ植物であるスギナが単独で挑んでいる。そう考えると健気(けなげ)にも思いますが、スギナは1、2を争う難防除雑草だそうです。地下茎が地中で長く伸び、畑を耕すなどして切断されても再生することができるので、人間の手による除去は困難なことから「地獄草」の別名を持っているとか。ホームセンターなどでいろいろな除草剤が売られていますが、多くが被子植物防除用なのに対し、スギナはシダ植物なので農薬会社も頭を悩ませているのだそうです。

 

今でこそ雑草のステータスに甘んじているシダ植物ですが、かれこれ4億年前はシダ植物が植物界の頂点でした。というより、シダ植物こそが、それまでのコケ植物に代わって大地に深く根をおろした最初の植物だったのです。

勢いに乗ったシダは、なんと40mもの巨木になり(13階建マンションくらい)、湿地帯に「森」を形成していました。その頃大気中の二酸化炭素は現在の10倍以上もの高濃度だったので、温室効果により気温は現在よりも3℃も暖かく、水辺になるとなおさら蒸し暑かったのです。その水辺にあるシダ樹木が、大量の二酸化炭素を吸収し始めたのです。

それだけではありません。シダ樹木を支える巨大な根は、呼吸で二酸化炭素を放出して水に溶け込み炭酸水となり、それによって岩石の風化も加速しました。岩石から放出されたカルシウムが大気中の二酸化炭素と結合したため、石灰石や鍾乳洞などの炭酸カルシウムを生成しました。

シダの森が、地上だけでなく地下でも大量の二酸化炭素を固定した結果、3億年前には7℃も地球が寒冷化したといいます。

 

温室効果が緩み涼しくなる一方、大気中の酸素濃度は現在の2倍に近い35パーセントまで上昇しました。それが昆虫の巨大化を引き起こし、60cmサイズのトンボ、1mのゴキブリ、2mのムカデなどの巨大昆虫が繫栄したといいます。どこか映画「風の谷のナウシカ」を想像してしまいます(って、あれは別の世界の話なので違う生き物です)が、それに比べれば、現在のサイズのゴキブリやムカデはかなりかわいい部類といえますね。

今や山菜サイズになったシダ植物は、水辺に初期の土壌をつくっただけでなく、地球最初の本格的な森と土を形成し、壮大な気候変動を引き起こしていたのです。

ちなみに恐竜が登場するのはもっと後、2億年前です。

 

黄緑色で茎だか葉だかわからない、難防除で「地獄草」とまでいわれる雑草・スギナは、そんなシダ植物の一種です。時代を経て地球は大きく変貌しましたが、その異様さ・たくましさは、かつての地球をどこか思い出させてくれます。

道端のスギナをぜひ見つけてください(たぶん採っても怒られません?)。今も元気に生えているスギナを見つけたら、しばし太古の地球に思いを馳せてみませんか。

 

<参考>

  • Wikipedia:スギナ

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%AE%E3%83%8A

  • 藤井一至『大地の五億年 せめぎあう土と生き物たち』ヤマケイ文庫、山と渓谷社、2022

 

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