定期テストの答案が返ってきて、「素因数分解」という見慣れない言葉のところで点を落としていた——。あるいは、お子さんが「割り算なのに答えがかけ算になるのが意味わからない」と教科書を閉じてしまった。中学校で素因数分解を習い始めるこの時期、ご家庭でこうした場面に出くわすことは少なくありません。
素因数分解は、計算そのものは決して難しくありません。やり方さえ正しくつかめば、多くの生徒が10分ほどで「できる」と言えるようになる単元です。つまずく原因は能力ではなく、最初に出会う「素数」「指数」という言葉の壁と、すだれ算の手順を見よう見まねで覚えてしまうことにあります。
この記事では、個別指導WAMで中学数学を担当する教育プランナーが、現場で多くの生徒のつまずきを見てきた経験をもとに、素因数分解を「定義 → やり方 → つまずき克服 → 使い道」の順で整理しました。つまずきを5つのタイプに分け、それぞれに合った処方箋を表で示していること、そして保護者の方がどう声をかければよいかまで踏み込んでいます。読み終える頃には、お子さんが今どこでつまずいているのかが見え、次の一手が決まります。
Contents
素因数分解とは|「素数のかけ算に分解する」が一言の答え
まず結論からお伝えします。素因数分解とは、ある自然数を、素数だけのかけ算の形で表すことです。たとえば60なら、60 = 2 × 2 × 3 × 5 と表せます。これが素因数分解です。
「言葉が難しそう」と身構えるお子さんが多いのですが、やっていること自体は「数を、それ以上分けられない数のかけ算にバラす」だけです。ここでつまずく生徒のほとんどは、計算ができないのではなく、前提となる用語の意味があいまいなまま先に進んでいるだけです。順番に整理しましょう。
素数とは|「1とその数自身でしか割れない数」
素数とは、1とその数自身のほかに約数を持たない、2以上の自然数です。具体的には、2, 3, 5, 7, 11, 13, 17, 19, 23 … と続きます。
ここで中学生が必ず一度は引っかかるのが、「1は素数ではない」というルールです。1は「1とその数自身」が同じ数になってしまうため、素数の定義から外れます。1を素数だと思い込んでいると、素因数分解の答えに余計な「1」を書いてしまい不正解になるので、ここは最初に押さえておきたいポイントです。
また、2は「唯一の偶数の素数」です。3以降の偶数(4, 6, 8 …)はすべて2で割れてしまうため、偶数で素数なのは2だけ、と覚えておくと判断が速くなります。
素因数とは|素数でできた「部品」のこと
ある数を素数のかけ算で表したとき、その1つひとつの素数を素因数と呼びます。60 = 2 × 2 × 3 × 5 であれば、2・3・5が60の素因数です。
「因数」という言葉は、かけ算を構成している1つひとつの数のこと。そのうち素数であるものが素因数、と分けて理解すると混乱しません。
指数を使ったまとめ方|同じ素数は右肩の数字で
60 = 2 × 2 × 3 × 5 のように、同じ素数(ここでは2)が何度も出てくるときは、指数を使ってまとめます。2が2回かけられているので、2 × 2 = 2² と書き、最終的に次のように表します。
60 = 2² × 3 × 5
この 2²(2の2乗)の右肩の小さな数字が「指数」で、その素数を何回かけたかを表しています。テストでは「指数を使って表しなさい」と指定されることが多いため、2 × 2 × 3 × 5 のままだと減点される場合があります。最後に必ず指数の形に直す——これを習慣にするだけで、ケアレスミスが1つ減ります。
素因数分解のやり方|すだれ算が1番ミスが少ない
素因数分解のやり方にはいくつか流派がありますが、中学生に最もおすすめなのは「すだれ算(はしご算・連除法とも呼ばれます)」です。わり算の筆算を上下逆さまにしたような形で計算過程を書き残せるため、頭の中だけで処理せずに済み、ミスが激減するのが理由です。
すだれ算の手順を5ステップで
ここでは60を例に、すだれ算の手順を分解してお見せします。
- 分解したい数を書き、左にL字の線を引く
- 1番小さい素数(2)から割れるか試し、割れたら左に素数・下に商を書く
- その商をさらに素数で割る。1番小さい素数で割れなくなったら次に大きい素数で割る
- これを商が素数になるまで繰り返す
- 割るのに使った素数と、最後の商をすべてかけ合わせ、指数でまとめる

ポイントは2つめのステップの「最も小さい素数から順に試す」ことです。大きい素数からいきなり試そうとすると割り損ねが起きやすく、計算の途中で行き詰まったり、素因数の見落としが発生したりしやすくなります。「まず2で割れるか、ダメなら3、その次は5、7 …」と小さい順に固定しておくと、誰がやっても同じ手順になり、再現性が生まれます。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
最後の商(上の例なら「5」)も、答えのかけ算に必ず入れます。WAMの指導現場で最も多い間違いが、この「最後の商を書き忘れる」パターンです。すだれ算は「左に並んだ素数たち」に注目しがちですが、答えは「左の素数 × 1番下の商」。1番下に残った数を○で囲んでから式を書く習慣をつけると、この抜けがなくなります。
「どの素数で割れるか」を見抜く3つの目印
すだれ算で手が止まる原因の多くは、「この数、何で割れるんだっけ?」と判断に迷うことです。次の3つの目印を知っておくと、割れる素数を素早く見つけられます。
- 2で割れる:一の位が偶数(0,2,4,6,8)。例:48 → 2で割れる
- 3で割れる:各位の数字を足した合計が3の倍数。例:57 → 5+7=12 → 3で割れる
- 5で割れる:一の位が0か5。例:85 → 5で割れる
7や11で割る場面は中学レベルでは多くありませんが、2・3・5のどれでも割れなくなったら「7で試す」と覚えておけば十分対応できます。
つまずきタイプ別|あなたのお子さんはどれ?診断と処方箋
ここがこの記事の核心です。素因数分解でつまずく生徒を現場で見ていると、つまずき方は大きく5つのタイプに分かれます。そして、タイプによって効く対策がまったく違います。やみくもに「もう一回やりなさい」と練習量を増やしても、原因に合っていなければ同じところで止まり続けます。
まずは下の表で、お子さんがどのタイプに近いかを見てください。
| つまずきタイプ | こんな症状 | 本当の原因 | 効く処方箋 |
|---|---|---|---|
| ①素数あいまい型 | 4や9を素数だと思って割るのをやめてしまう | 素数の定義が定着していない | 1から30までの素数を声に出して暗唱。「1は素数でない」を別途確認 |
| ②大きい数から型 | いきなり大きい数で割ろうとして混乱する | 「小さい順」のルールを知らない | 「まず2、次に3、次に5」と割る順番を紙の端にメモ |
| ③商の書き忘れ型 | 左の素数だけかけて、最後の商を入れ忘れる | すだれ算の答えの作り方の誤解 | 最後の商を○で囲んでから式を書く |
| ④指数忘れ型 | 2×2×3×5 のまま答えにして減点される | 「指数で表す」指定の見落とし | 答えを書いたら指数化を必ず最終チェック |
| ⑤暗算ミス型 | 途中のわり算を暗算して計算ミス | 筆算を省略している | わり算の商を必ず筆算・横に書く |
最も多いのは「①素数あいまい型」
5タイプの中で群を抜いて多いのが、素数の定義があいまいなまま手を動かしているケースです。とくに「9」を見落とす生徒が目立ちます。9は3×3なので、本来は3でさらに割れるのに、9を素数だと思い込んで割るのをやめてしまうのです。
このタイプには、練習問題を増やすよりも先に、1から30までの素数(2,3,5,7,11,13,17,19,23,29)を、見ずに言えるかを確認してあげてください。素数の地図が頭に入っていないと、何度解いても同じ場所で止まります。
ケアレスミスに見える「タイプ③④⑤」は仕組みで防ぐ
商の書き忘れ・指数忘れ・暗算ミスの3つは、「気をつけなさい」では直りません。人は注意していても、同じミスを繰り返すものです。だからこそ、「最後の商を○で囲む」「式を書いたら指数化をチェックする」「わり算は必ず横に筆算を書く」という動作のルールに落とし込みます。意志ではなく仕組みで防ぐ、というのが現場での鉄則です。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
つまずきタイプは1つとは限りません。むしろ「『①素数あいまい型』と『③商の書き忘れ』が両方ある」というお子さんが多数です。大切なのは、一度に全部直そうとしないこと。まずは1番影響の大きい①(素数の定着)から手をつけ、それが安定してから③(最後の商を○で囲む)④(指数化チェック)へ進みます。複数を同時に意識させると、どれも中途半端になって自信を失わせてしまいます。
素因数分解は何の役に立つ?|最大公約数・最小公倍数・平方根への橋渡し
「分解できたけど、これ何に使うの?」——この疑問に答えられないまま練習だけ続けると、生徒のやる気は続きません。実は素因数分解は、中学・高校の数学で何度も登場する“土台の技術”です。ここを伝えるだけで、お子さんの取り組み方が変わります。

最大公約数・最小公倍数がミスなく求められる
2つの数の最大公約数や最小公倍数は、それぞれを素因数分解すると、書き出すよりも確実に求められます。たとえば60と42を考えてみましょう。
- 60 = 2² × 3 × 5
- 42 = 2 × 3 × 7
このとき、
- 最大公約数=両方に共通する素数を、指数の小さいほうでとってかける → 2 × 3 = 6
- 最小公倍数=登場するすべての素数を、指数の大きいほうでとってかける → 2² × 3 × 5 × 7 = 420

このように、素因数分解(部品にバラす作業)と最大公約数・最小公倍数(部品を選び直して組み立てる作業)は、「分解」と「再構成」という表裏の関係にあります。素因数分解という共通の土台があるからこそ、両方を同じ考え方で求められるわけです。
ただし、ここにも落とし穴があります。最大公約数は「指数の小さいほう」、最小公倍数は「指数の大きいほう」を選びます。これを逆にしてしまうミスが非常に多いので、「公約数=小さいほう・控えめに」「公倍数=大きいほう・たっぷり」とイメージで結びつけると取り違えにくくなります。
中3の「平方根」で素因数分解がそのまま武器になる
そして、中学3年生で学ぶ「平方根(ルート)」を簡単にする計算で、素因数分解はそのまま使われます。これが、中1〜中2で素因数分解を確実にしておくべき最大の理由です。
たとえば √18 を簡単にするとき、ルートの中の18を素因数分解します。
18 = 2 × 3² = 3² × 2
ルートの中に 3²(同じ数の2乗)があれば、その3をルートの外に出すことができます。
√18 = √(3² × 2) = 3√2
つまり、「ルートを簡単にする」=「中身を素因数分解して、2乗のペアを外に出す」ということ。素因数分解が速く正確にできる生徒ほど、中3の平方根でつまずきません。逆に、ここがあいまいなまま中3に進むと、平方根の計算で苦労が二重にのしかかります。今この単元を丁寧に
やることが、1年後の自分を助ける——この見通しを伝えてあげてください。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
高校に入ると、素因数分解の考え方は「整数の性質」や「約数の個数を求める公式」へと発展していきます。約数の個数は、素因数分解した指数に1を足してかけ合わせると求められる、というように、中学のこの作業がそのまま土台になります。「今やっていることは先につながっている」と知るだけで、目の前の計算への向き合い方が変わる生徒を、現場で何度も見てきました。
練習問題で総点検|つまずきポイントを狙った5問
知識が入ったら、最後は手を動かして確認です。ここでは、第3章のつまずきタイプを意識した5問を用意しました。答えは指数を使った形で書く練習も兼ねています。
- 28を素因数分解しなさい
- 90を素因数分解しなさい
- 168を素因数分解しなさい(やや大きい数)
- 36と48の最大公約数・最小公倍数を、素因数分解を使って求めなさい
- √50 を簡単にしなさい
解答
- 28 = 2² × 7
- 90 = 2 × 3² × 5
- 168 = 2³ × 3 × 7
- 36 = 2² × 3²、48 = 2⁴ × 3 より、最大公約数 = 2² × 3 = 12、最小公倍数 = 2⁴ × 3² = 144
- 50 = 2 × 5² より、√50 = 5√2
3問目で「最後の商の書き忘れ」、4問目で「指数の大小の取り違え」、5問目で「平方根への接続」を確認できます。間違えた問題があれば、第3章の表に戻って、どのタイプのつまずきかを照らし合わせてみてください。間違いの原因を1つに特定できれば、克服は一気に近づきます。
よくある質問(FAQ)
Q1. すだれ算とわり算の筆算、どちらで教えるべきですか?
A. 中学生にはすだれ算(はしご算)をおすすめします。割る素数と商を1つの図に書き残せるため、計算過程が目で追え、ミスの発見も容易だからです。お子さんが学校で別の書き方を習っている場合は、無理に統一せず、学校の方式に合わせてあげてください。大切なのは形式より、最も小さい素数から順に・最後の商まで・指数でまとめるの3点です。
Q2. 1は素数ですか?素因数分解の答えに1は書きますか?
A. 1は素数ではありません。したがって、素因数分解の答えに1は書きません。6 = 1 × 2 × 3 のように1を入れてしまうのは誤りで、正しくは 6 = 2 × 3 です。お子さんが答えに1を書いていたら、素数の定義を一緒に確認してあげてください。
Q3. 大きい数(3桁以上)になると手が止まります
A. 3桁の数は、まず2・3・5の割り算の目印(第2章の「どの素数で割れるかを見抜く3つの目印」)で割れるだけ割り、数を小さくしてから考えると楽になります。168なら、2で3回割って 2³ × 21、21はさらに 3 × 7 と分解できます。いきなり全体を見ず、割れるものから一段ずつ小さくする意識を持たせてあげてください。
Q4. 家庭でどう声をかければ続きますか?
A. 「なんでこんな簡単なのが分からないの」は逆効果になりがちです。素因数分解は手順の単元なので、できない=能力ではなく、手順のどこか1か所が抜けているだけであることがほとんどです。「どのステップで止まった?」と原因を一緒に探す声かけに変えるだけで、お子さんは落ち着いて取り組めるようになります。第3章のタイプ表を一緒に眺めるのも有効です。
Q5. 塾と家庭学習、どちらで対策すべきですか?
A. つまずきの原因が自分で特定できているなら、家庭学習でも十分克服できます。一方、「どこでつまずいているのか親子では分からない」「何度教えても同じところで止まる」という場合は、第三者がつまずきの一点を見抜くほうが早いケースもあります。個別指導WAMでは、お子さんの解く様子を見ながら、どのステップでつまずいているのかを一緒に特定し、その一点に絞った指導を行っています。
まとめ:素因数分解は「手順」と「使い道」の理解で必ず越えられる
素因数分解は、能力ではなく手順の単元です。この記事でお伝えした要点を、最後に整理します。
- 定義を固める:素数(1とその数自身でしか割れない数/1は素数でない)と指数の意味を先に押さえる
- すだれ算で解く:小さい素数から順に割り、最後の商まで入れ、指数でまとめる
- つまずきはタイプ別に対処:原因に合った処方箋を1つずつ。一度に全部直そうとしない
- 使い道を知る:最大公約数・最小公倍数、そして中3の平方根へ直結する土台である
つまずいているお子さんも、原因が1か所に特定できれば、克服は驚くほど早い単元です。まずは今夜、第3章のタイプ表を見ながら「どこで止まっているか」を一緒に確認するところから始めてみてください。
個別指導WAMでは、お子さん一人ひとりが「どのステップでつまずいているか」を見極め、その一点に絞った指導で苦手を得意に変えるお手伝いをしています。「家ではどう教えればいいか分からない」とお悩みの方は、無料の学習相談をご利用ください。
