高校に入って最初の「模試のご案内」を受け取ったとき、「そもそも模試って、定期テストと何が違うの?」と手が止まっていませんか。あるいは、初めての模試で返ってきた判定が「E」で、アルファベットの意味もわからないまま気持ちだけが沈んでしまった——。高校生になると急に登場する「模試」という言葉に、戸惑うのは自然なことです。
模試(模擬試験)は、大学入試の本番を想定した練習試験です。ただし、一口に模試と言っても、マーク式と記述式、全国規模のものと特定の大学に特化したものなど、いくつもの種類があります。仕組みを知らずに受けると、「点数が悪くて落ち込んで終わり」になりがちですが、正しく使えば、模試は志望校合格に向けた最強のナビゲーションになります。
この記事は、個別指導塾WAMで高校生の大学受験指導を担当する教育プランナーが、「模試とは何か」をゼロから整理したものです。読み終える頃には、次の4つがはっきりわかります。
- 模試の正体(定期テストとの決定的な違い)
- 高校生が受ける模試の種類(マーク/記述・全国模試・共通テスト模試・大学別冠模試)
- 偏差値と判定A〜Eの正しい読み方(点数に一喜一憂しなくなる)
- 結果を成績に変える復習法(受けっぱなしにしない仕組み)
「模試って何?」という基本的な疑問から「模試をどう活用すればいいか」という実践的な対策まで、順を追ってわかりやすく解説していきます。
Contents
模試とは何か — 定期テストとは「測るもの」が違う
結論から言うと、模試とは「大学入試の本番を想定し、今の自分の実力が全国のライバルの中でどの位置にあるかを客観的に測るテスト」です。学校の定期テストとは、目的も範囲も採点の軸も根本的に違います。
当塾の面談でも、「定期テストは平均以上なのに、模試になると急に順位が下がる」というご相談をよくいただきます。これは学力が落ちたわけではなく、模試と定期テストが「別の物差し」で測っているだけなのです。
定期テストは「範囲内の理解」、模試は「入試での実力」を測る
定期テストは、授業で習った範囲から出題され、教科書やワークをしっかりやれば点数が取れるように設計されています。目的は「学校の授業をどれだけ理解したか」の確認です。
一方、模試が測るのは「大学入試で通用する実力」です。出題範囲はこれまで習った全範囲に及び、初めて見る形式の問題や、複数の単元を組み合わせた応用問題が並びます。つまり模試は、定期テストのように「範囲を覚えれば取れる」テストではなく、知識を使いこなす力を試す場なのです。
模試は「相対評価」— 点数より「位置」を見る
模試の最大の特徴は、点数そのものより「全国の受験生の中での位置」を重視することです。この位置を数値化したものが偏差値です。
定期テストは「100点満点中何点」という絶対評価ですが、模試では同じ80点でも、問題が難しい回なら上位、易しい回なら平均あたり、と評価が変わります。だからこそ、点数の上下だけで判断せず、偏差値と判定で位置を確認する視点が欠かせません。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
初めての模試は「点数」ではなく「どの単元で、どんな間違い方をしたか」を見てください。
なぜなら、最初の模試は今の学力(現在地)を知るための「健康診断」のようなものだからです。点数が低くても、自分の弱点が具体的に見えたなら、その模試は十分に役割を果たしています。結果に落ち込まず、次の学習計画に活かしていきましょう。
高校生が受ける模試の種類 — 4つの軸で整理する
「模試」と一括りにされがちですが、高校生が受ける模試にはいくつかの種類があります。ここを理解すると、「自分は今どの模試を受けるべきか」が見えてきます。大きく4つの軸で整理します。
出題形式で分ける — マーク式と記述式
まず、解答の形式で2種類に分かれます。この違いは、志望する大学の入試方式に直結します。
| 形式 | 内容 | 対応する入試 |
|---|---|---|
| マーク式模試 | 選択肢から答えを選ぶ形式。共通テストと同じ | 共通テスト・私大のマーク方式 |
| 記述式模試 | 答えや途中式・論述を自分で書く形式 | 国公立大の2次試験・私大の記述方式 |
国公立大を志望するなら、共通テスト対策のマーク式と、2次試験対策の記述式の両方が必要になります。私大専願でも、記述式で問われる思考の深さは実力アップに役立つため、両方を経験しておくのがおすすめです。
対象範囲で分ける — 全国一般模試・共通テスト模試・大学別冠模試
次に、「どの入試を想定しているか」で種類が分かれます。ここが模試を選ぶうえで最も重要な軸です。
- 全国一般模試(総合模試):全国の高校生を対象にした、基礎から標準レベルの学力を測る模試。大手予備校や教育事業者が実施する全国規模の模試(全統模試・進研模試・駿台模試など)が代表的で、受験者数が多いため母集団が大きく、全国での立ち位置を示す偏差値の客観性や信頼性が高いのが特徴です。
- 共通テスト模試(マーク模試):大学入学共通テストの形式・時間・配点を再現した模試。時間配分の練習や、共通テスト特有の読解量への慣れに使います。
- 大学別冠模試(オープン模試・実戦模試):特定の難関大学の入試傾向を再現した模試。東大・京大をはじめとする難関大向けに実施され、志望者だけが集まるため、その大学を狙うライバルの中での自分の位置がわかります。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
高1・高2のうちは「全国一般模試」を軸にし、大学別冠模試は志望校が固まる高3から受けるのが基本です。
基礎学力の土台ができていない段階で難関大の冠模試を受けても、判定が厳しく出てしまい、自信を失う結果になりかねません。
難易度・実施主体で分ける
同じ「全国一般模試」でも、実施する事業者によって難易度や受験者層が異なります。基礎〜標準レベルで受験者が非常に多いものもあれば、難関大志望者が多く集まり難易度が高いものもあります。難易度の高い模試ほど偏差値は低めに出やすいため、複数の模試の偏差値を単純比較しないよう注意が必要です。
なお、特定の予備校や事業者の判定基準・母集団のレベルは年度や回によって変わります。個別の数値を鵜呑みにせず、「その模試の中での位置」として相対的に捉えるのが正解です。
学年で変わる模試の意味
模試の役割は学年によって変わります。WAMの指導現場で高校生に説明している基準は次の通りです。
| 学年 | 模試の主目的 | 受験の目安 |
|---|---|---|
| 高1 | 学習習慣の確認・基礎学力の現在地把握 | 年2〜3回 |
| 高2 | 苦手単元の発見・志望校の方向づけ | 年3〜4回 |
| 高3・既卒 | 志望校判定・共通テスト対策・出願戦略 | 月1ペース+冠模試 |
高1・高2の模試は「順位を競う」より「弱点を早めに見つける」ためのもの。判定に落ち込む必要はありません。高3からは志望校との距離を測る本番モードに切り替わります。

偏差値の見方 — 点数に一喜一憂しなくなる考え方

模試の結果を正しく読むには、偏差値の意味を知ることが欠かせません。偏差値は難しそうに見えますが、要点はシンプルです。
偏差値とは「平均からどれだけ離れているか」の数値
偏差値とは、受験者全体の中で、自分の得点が平均からどの程度離れているかを示す相対的な指標です。平均点を取った場合の偏差値は50となり、平均点より得点が高ければ50より大きく、低ければ50より小さくなります。
大切なのは、偏差値は単純な「点数」ではなく、平均点や受験者の得点のばらつきをもとに計算されるという点です。同じ60点でも、受験者全体の平均点や得点のばらつきによって、偏差値は変わります。
偏差値の分布の目安
偏差値が受験者全体のどのあたりに位置するかの目安は、次の通りです。
| 偏差値 | 正規分布を仮定した割合の目安 |
|---|---|
| 70以上 |
約2.3% |
| 60以上70未満 |
約13.6% |
| 50以上60未満 |
約34.1% |
| 40以上50未満 |
約34.1% |
| 30以上40未満 |
約13.6% |
| 30未満 |
約2.3% |
| 合計 |
100.0% |
※平均50・標準偏差10の正規分布を仮定した場合の一般的な目安です。6つの区間に分けた割合のため、合計すると100%になります。実際の分布は模試や受験者集団によって異なります。
「点数が上がったのに偏差値が下がる」のはなぜか
模試でよくある混乱が、「前回より点数は上がったのに、偏差値は下がった」というものです。これは、その回の問題が易しく、全体の平均点が上がったために起こります。周りも同じように点数を伸ばせば、自分の相対的な位置は変わらない、あるいは下がるわけです。
だからこそ、点数の増減で一喜一憂するのではなく、偏差値の推移で「自分の立ち位置が上がっているか」を見るのが正しい使い方です。
判定A〜Eの意味 — 志望校との距離を測る
模試の結果には、志望校ごとに「A〜E」の判定が付いてきます。この判定こそ、模試を志望校選びに活かすための最重要データです。
判定A〜Eが表すもの
判定は、その模試の偏差値をもとに、志望校の合格可能性を段階で示したものです。一般的な目安は次の通りです。
| 判定 | 合格可能性の目安 | 解釈 |
|---|---|---|
| A | 80%以上 | 安全圏。現状を維持すれば合格が見込める |
| B | 60〜80% | 合格圏。油断せず学習を続けたい |
| C | 40〜60% | 五分五分。ここからの頑張りで決まる |
| D | 20〜40% | 現状は厳しいが射程内。本気の対策が必要 |
| E | 20%未満 | 大幅な底上げが必要。戦略の見直しも視野 |
なお、この合格可能性の区切りは模試を実施する事業者によって異なります。あくまで「その模試での目安」として捉え、複数回の判定の推移で判断するのが賢明です。
E判定でも慌てなくていい理由
高2の冬や高3の春の段階でE判定が出ても、志望校をすぐ下げる必要はありません。この時期はまだ全範囲の学習が終わっておらず、多くの受験生が伸びしろを残しています。実際、当塾でも高3の春にE判定だった生徒が、夏以降の伸びで合格をつかむケースは珍しくありません。
判定で本当に注目すべきは「1回の結果」ではなく「推移」です。E→D→Cと上向いていれば、たとえまだC判定でも、その勢いは大きな武器になります。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
判定は「合否の予言」ではなく「あと何が足りないかを教えてくれる通知表」として使ってください。
なぜなら、判定の記号だけに落ち込んで勉強の手が止まってしまうと、せっかくの伸びしろを自分で潰してしまうからです。E判定はこれから伸ばせる領域が大きいという意味でもあります。判定の結果を過剰に恐れず、現在の課題を整理するためのツールとして活用していきましょう。
保護者の方へ — 判定を「責める材料」にしない
保護者の方が判定を見て思わず口にしがちなのが、「E判定なんてもう無理でしょ」という一言です。しかし、この言葉は子どものやる気を根こそぎ奪ってしまいます。判定を見たときは、「Cにするにはあと何点必要なんだろうね」と、責める言葉ではなく一緒に考える問いに変えるだけで、家庭の会話は驚くほど前向きになります。
なぜ模試を受けるのか — 4つのメリット
「模試って受ける意味あるの?」という高校生の声もよく聞きます。模試を受ける価値は、単なる点数確認にとどまりません。主なメリットは4つです。
- 現在地がわかる:全国の中での自分の位置と、志望校との距離が数値で見える。
- 弱点が具体的に見える:どの科目・どの単元・どんな問題で失点したかがデータで残る。
- 本番の予行演習になる:時間配分、初見問題への対応、緊張感の中で解く経験は、模試でしか得られない財産になる。
- モチベーションの燃料になる:判定や偏差値の変化が、次に向けた具体的な目標になる。
特に3つ目の「本番の予行演習」は見落とされがちですが、時間配分の失敗や緊張で思うように力を出せなかった経験を、本番前に積んでおけることこそが模試ならではの価値です。
模試の復習法 — 受けっぱなしにしない仕組み

模試は「受けて終わり」では、その価値の大半を捨てているのと同じです。WAMの指導経験では、模試の効果の8割は復習で決まります。記憶が新しいうちに「なぜ間違えたか」を分析できるからです。
復習は「翌日→1週間後」の2段階で
復習は、「鉄は熱いうちに打て」が基本です。次の2段階で進めます。
| タイミング | やること | 目安時間 |
|---|---|---|
| 模試の翌日 | 自己採点→間違えた問題を解き直し→原因を分類 | 90〜120分 |
| 1週間後 | 間違えた問題をもう一度、時間を計って解く | 30〜45分 |
同じ問題を時間をおいて何度も解き直す手法は、一度に長時間詰め込むよりも記憶に定着しやすいことが、教育心理学の「分散学習」の研究でも実証されています。
間違いの原因を4つに分類する
ただ解き直すだけでなく、「なぜ間違えたか」を分類すると、次にやるべきことが明確になります。
| 原因タグ | 状況 | 対策 |
|---|---|---|
| 知識不足 | 用語・公式そのものを知らなかった | 教科書・参考書の該当範囲を再学習 |
| 解法ミス | 知っていたが解き方の手順を間違えた | 例題の手順を声に出してなぞる |
| ケアレスミス | 計算・写し間違い・問題の読み違い | 見直しのチェック手順を作る |
| 時間切れ | 時間が足りず手をつけられなかった | 大問ごとの時間配分を再設計 |
「全部ケアレスミス」で片づけてしまう生徒が多いのですが、本当にケアレスミスなのは一部です。「ケアレス」は便利な逃げ言葉になりやすいので、正直に知識不足や解法ミスに振り分けることが、次の一歩につながります。
復習ノートは「解説の書き写し」をしない
復習ノートを作るなら、解説をそのまま書き写すのは避けてください。書き写しは「やった気」になるだけで、実力にはつながりにくいものです。代わりに、「次にどう考えれば正解できたか」を自分の言葉で1〜2行だけ書きます。この一手間が、同じミスを繰り返さない最大のコツです。
学年別・模試の活用法 — 高1・高2・高3で変わる使い方
同じ模試でも、学年ごとに向き合い方が変わります。
高1 — 学習習慣の点検に使う
高1の模試は、順位を気にするより「今の勉強のやり方が定着しているか」を確認する場です。範囲がまだ狭いぶん、基礎の抜けが見つけやすいのが利点。ここで見つけた弱点を早めに埋めておくと、高2・高3で大きな差になります。
高2 — 志望校の方向づけと苦手つぶし
高2は、志望校をぼんやりでも意識し始める時期です。模試の判定を「今の位置」として受け止め、志望校とのギャップを埋める学習計画を立てます。特に、英語や数学のように学習の積み上げが必要な科目については、苦手意識や抜け漏れを高2のうちに解消しておくことが鉄則です。
高3・既卒 — 判定と共通テスト対策の本番モード
高3からは、模試が志望校判定と本番シミュレーションの中心になります。共通テスト模試で時間配分を固め、大学別冠模試で志望校のライバルの中での位置を測る——この2本立てで、出願戦略まで見据えて活用します。
よくある質問(FAQ)
Q. 模試は高校が申し込んでくれますか?自分で申し込むのですか?
A. 学校単位で一斉に受ける模試(校内実施)は学校が手配してくれることが多く、授業の一環として受験します。一方、個人で申し込む会場模試や大学別冠模試は、各模試の公式サイトから自分で申し込みます。志望校対策として追加で受けたい模試がある場合は、学校や塾の先生に相談すると案内してもらえます。
Q. 模試の判定がずっとEです。志望校を下げるべきですか?
A. 高3の夏頃までなら、E判定でもすぐ下げる必要はありません。まだ全範囲の学習が終わっておらず、伸びしろが大きい時期だからです。ただし、秋以降の模試で改善が見られず、必要な偏差値との差が大きい場合は、第1志望はそのままに、併願校のレベルを調整する「2段構え」を検討します。
Q. 模試と定期テスト、どちらを優先すべきですか?
A. どちらも大切ですが、目的が違います。定期テストは内申(評定)に関わり、推薦入試を考えるなら軽視できません。模試は一般入試での実力を測るものです。志望する入試方式に合わせて比重を決めるのが正解で、迷う場合は先生に相談してください。
Q. 模試の復習にはどれくらい時間をかければいいですか?
A. 目安は、翌日に90〜120分、1週間後に30〜45分です。「次の模試の対策」より「今回の模試の復習」を優先してください。受けた模試を1回分きちんと復習するほうが、新しい問題集を何冊もこなすより効果的です。
Q. 模試の過去問や解き直しの教材はどこで手に入りますか?
A. 各模試を実施する事業者の公式サイトで、過去の問題集が販売されている場合があります。また、塾に通っていれば過去問を借りられることも多いので、先生に相談してみてください。返却された自分の模試そのものが、最良の復習教材です。
まとめ — 模試は「怖いテスト」ではなく「合格へのナビ」
模試とは、大学入試の本番を想定し、全国の中での自分の位置を測る練習試験です。定期テストとは測るものが違い、点数ではなく偏差値と判定で「位置」を見るのがポイントでした。
この記事の要点を振り返ります。
- 模試は入試での実力を相対評価で測る(定期テストとは別物)
- 種類はマーク/記述、全国模試・共通テスト模試・大学別冠模試(学年で使い分ける)
- 偏差値は平均50の相対指標、判定A〜Eは志望校との距離(推移で見る)
- 効果の8割は復習で決まる(翌日と1週間後の2段階+原因分類)
模試を「怖い成績判定」ではなく「合格までのナビゲーション」として使えるようになれば、受けるたびに次の一手が見えてきます。
とはいえ、「返ってきた模試をどう復習すればいいかわからない」「判定を見ても、次に何をすべきか自分では計画が立てられない」という高校生も多いはずです。個別指導塾WAMでは、無料の学習相談にて、模試の結果分析から志望校合格に向けた学習プランの作成まで、一人ひとりに合わせて丁寧にご提案します。模試を最大限に活かしたい方は、ぜひお気軽にご相談ください。
参考文献
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説」https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/1407074.htm
- 独立行政法人 大学入試センター 公表資料(大学入学共通テストの実施要項)https://www.dnc.ac.jp/
