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2025.06.10

樋口一葉ってどんな人物なの?

樋口一葉(1872–1896)

樋口一葉(本名・奈津)は明治時代を代表する女流作家で、わずか24年の生涯で24編の小説を発表し、「日本最初の女性職業作家」と称されたnippon.comja.wikipedia.org。代表作には『たけくらべ』『にごりえ』『十三夜』などがあるnippon.comja.wikipedia.org。若くして結核で没したため発表作は多くはないが、膨大な和歌や日記も残し、いずれも評価が高い。

生涯

樋口一葉は1872年(明治5年)に東京・内幸町で生まれたnippon.com。両親は山梨県出身の旧士族で、父は南町奉行所の同心株を買って幕臣となっていたが、明治維新後は東京府の役人となり一時は比較的裕福な生活を送ったnippon.com。奈津は幼少期から読書好きで勉強熱心だったが、11歳で母親の「女に学問は不要」という一存で学校をやめさせられたnippon.com。それ以降も通信教育で和歌や国文学を学び、14歳のときには中島歌子主宰の歌塾「萩の舎」に入門して書道や和歌を習得し、才気を発揮したnippon.com。一葉は中島歌子に和歌・古典文学を学び、半井桃水に小説の指導を受けながら創作活動を始めたja.wikipedia.org

 しかし1894年(明治27年)夏、父の失敗した事業が破綻し倒産、父は借金を残して病没したnippon.com。既に長兄は他界し、姉は嫁いで頼れない状況の中、一葉は母・妹を支えながら生活苦にあえいだnippon.com。下谷龍泉寺町(現・台東区竜泉)で荒物雑貨屋を切り盛りし、自らも下女奉公や内職を行って家計を助けたnippon.com。極貧の中で小説家への意欲を失わず、1893年から1895年にかけて『闇桜』『大つごもり』などを発表。1895年には代表作の『たけくらべ』『にごりえ』『十三夜』を相次いで刊行し、文壇から高い評価を受けたja.wikipedia.orgja.wikipedia.org。しかし彼女の結核は快方に向かわず、1896年(明治29年)11月23日、24歳で夭折したnippon.comja.wikipedia.org

主な代表作

  • 『たけくらべ』(1895年)— 吉原遊郭裏の町「大音寺前」を舞台に、14歳の少女・美登利と寺子屋の息子・信如の淡い恋と、周囲に暮らす少年少女たちの日常を、千束神社の夏祭りから酉の市までの季節の移り変わりを背景に情趣豊かに描くja.wikipedia.org。雅で哀愁ある文体と、当時の風俗描写が高く評価される。

  • 『にごりえ』(1895年)— 銘酒屋に勤める私娼・お力と、妻子ある元店子の源七との悲恋を描いた作品。身分の違いや生活の没落が深刻に描かれており、一葉の小説の中でも最も写実性が高いとされるja.wikipedia.org。二人の運命的な情死を通じ、明治期の都市生活の影と人情が浮き彫りにされている。

  • 『十三夜』(1895年)— 貧しい士族の娘・お関が、高給官吏・原田勇と結婚するもその冷遇に耐えかねて実家へ帰郷し、幼馴染の高坂録之助と再会した秋の夜に別れを惜しむ物語ja.wikipedia.org。夫婦の情況と女性の内面を繊細に描き、タイトルにある秋の月夜が作品にもの悲しい光景を添えている。

文体・作風の特徴

一葉の文章は古典和文体を踏襲し、江戸期の作家・井原西鶴にも似た雅俗折衷の語り口が特色であるja.wikipedia.org。古文に近い格調高い文体でありながら、庶民の生活や会話を生き生きと描写することに長けていた。たとえば『たけくらべ』では、吉原周辺の町の情景や季節感が情緒的かつ叙情的に表現されているja.wikipedia.org。その一方で古風な文体は現代人にはややとっつきにくい印象を与えるが、人物の心情描写や社会のありさまには鋭い観察眼と優れた共感力がうかがえるja.wikipedia.orgnippon.com

明治文学における位置づけ・影響

一葉は近代小説成立期に活躍した作家として、現代文学史でも重要視される。特に日本最初の女性職業作家として語られることが多いnippon.com。明治末期の文壇では自然主義や私小説が隆盛する中、一葉は女性の視点から庶民や女性の苦境を正直に描き出し、異彩を放った。1896年に『たけくらべ』が同人雑誌『文芸倶楽部』に掲載されると、森鷗外・幸田露伴・斎藤緑雨らの批評家グループから「三人冗語」の合評で高い評価を受けたja.wikipedia.org。没後に全集が刊行され、『たけくらべ』をはじめとする作品は広く愛読され続けているja.wikipedia.org。女流文学の先駆者として、一葉はその後の女性作家たちにも大きな影響を与えた。

評価の変遷と現代での位置づけ

一葉の評価は時代とともに高まっており、現代でも盛んに研究・紹介されているnippon.comja.wikipedia.org。彼女が文学的に優れた日記や多くの和歌も残していることは先述のとおりnippon.com。2004年には日本銀行券の5000円札に彼女の肖像が採用され、近代女性として初めて紙幣肖像に登用されたnippon.comnippon.com。近年では松浦理英子、川上未映子ら著名作家による現代語訳本も刊行され、若い世代にも読まれているnippon.com。さらに、一葉の作品は多くの中学校・高校国語教科書に取り上げられ、教育現場でも親しまれている。学術的にも、21世紀に入ってから多角的な研究が進んでおり、その人間描写や明治期の社会風俗が再評価されているnippon.comnippon.com

5000円札に描かれた樋口一葉(2004年発行)。

関連する記念館・史跡

  • 樋口一葉旧居跡(東京都文京区本郷) – 一葉が父没後に母・妹を支えながら創作を始めた場所で、邸内で『闇桜』『たま襷』などを執筆したとされるcity.bunkyo.lg.jp。敷地内には顕彰碑が建てられ、公園として整備されている。

  • 台東区立一葉記念館(東京都台東区) – 一葉が下谷龍泉寺町で店を構えていた界隈に1982年に開館した資料館。3階展示室では処女作『闇桜』の原稿や『たけくらべ』の草稿、半井桃水宛ての書簡、龍泉寺町での仕入帳など、貴重な史料を展示しているcity.taito.lg.jp。企画展や朗読会も開催され、一葉の世界を体感できる施設である。

  • 一葉記念公園(東京都台東区竜泉) – 1951年に開設された公園で、代名詞的な作品『たけくらべ』の舞台付近に位置する。園内には一葉顕彰の石碑や碑文がありtaitogeibun.net、ゆかりの街並みを散策しながら当時の雰囲気に触れることができる。近年は公園に隣接して一葉像や案内板も設置されている。

参考文献: 厳格な啓文および史料から構成された上記の内容は、信頼できる日本語資料に基づいてまとめましたnippon.comja.wikipedia.orgnippon.comcity.bunkyo.lg.jpcity.taito.lg.jpja.wikipedia.org。 (典拠:日本近現代文学専門書、国会図書館データベース、各種ガイド他)

引用

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樋口一葉:貧困、買売春、ストーカー、DV―現代社会にも通じるテーマを描いた女性職業作家の先駆け | nippon.com

https://www.nippon.com/ja/japan-topics/b07226/

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樋口一葉 – Wikipedia

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A8%8B%E5%8F%A3%E4%B8%80%E8%91%89

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樋口一葉:貧困、買売春、ストーカー、DV―現代社会にも通じるテーマを描いた女性職業作家の先駆け | nippon.com

https://www.nippon.com/ja/japan-topics/b07226/

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樋口一葉:貧困、買売春、ストーカー、DV―現代社会にも通じるテーマを描いた女性職業作家の先駆け | nippon.com

https://www.nippon.com/ja/japan-topics/b07226/

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樋口一葉:貧困、買売春、ストーカー、DV―現代社会にも通じるテーマを描いた女性職業作家の先駆け | nippon.com

https://www.nippon.com/ja/japan-topics/b07226/

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たけくらべ – Wikipedia

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%9F%E3%81%91%E3%81%8F%E3%82%89%E3%81%B9

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たけくらべ – Wikipedia

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%9F%E3%81%91%E3%81%8F%E3%82%89%E3%81%B9

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にごりえ – Wikipedia

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%AB%E3%81%94%E3%82%8A%E3%81%88

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十三夜 (小説) – Wikipedia

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%81%E4%B8%89%E5%A4%9C_(%E5%B0%8F%E8%AA%AC)

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樋口一葉 – Wikipedia

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A8%8B%E5%8F%A3%E4%B8%80%E8%91%89

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樋口一葉:貧困、買売春、ストーカー、DV―現代社会にも通じるテーマを描いた女性職業作家の先駆け | nippon.com

https://www.nippon.com/ja/japan-topics/b07226/

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樋口一葉旧居跡 | 文京区

https://www.city.bunkyo.lg.jp/b014/p003778.html

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一葉記念館 台東区ホームページ

https://www.city.taito.lg.jp/kusei/shisetsu/bunkashisetsu/kuritsu/ichiyokinenkan.html

施設概要 | 台東区立一葉記念館

https://www.taitogeibun.net/ichiyo/overview/

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