2023.02.21
【共通テスト現代文10年分講評ー10】2018年②
【2018年 小説】 【井上荒野『キュウリいろいろ』】 【全体講評】 やや難。20分。 5年連続女性作家。 リード文がある場合は 魂でリード文を読もう。 「息子と夫を亡くしひとりでお盆」。 もうこの時点でちょっと泣きそうだし (良い意味で)感動しそう面白そう。 評論文ほど頑なに 「客観的」になろうとしなくていい。 どうか良い意味で「主観的」に、 自身の過去の経験を回想しつつ、 あるいは未知を想像しつつ、 小説は「わくわく」 しながら読んでほしい。 【本文要旨】 息子を亡…
2023.02.20
【共通テスト現代文10年分講評ー9】2018年①
【2018年 評論文】 【有元典文・岡井大介 『デザインド・リアリティ』】 【全体講評】 やや難。25分。 文章量と図の登場に、 少々面食らった受験生も 多いかもしれない。 しかし本年度の文章は、 身近でわかりやすい具体例を どんどん示してくれるぶん、 前年度の硬質な科学評論「ゴレム」 と比較するとやや読みやすく、 力のある受験生なら満点も可能だ。 それでも、 現古漢合わせ40ページ超の問題量を たった80分で、と考えると、 やはり総じては「やや難」と 言わざるを得ない。 【本文要旨…
2023.02.19
【共通テスト現代文10年分講評ー8】2017年②
【2017年 小説】 【野上弥生子『秋の一日』】 【全体講評】 やや難。25分。 評論文と同じく前年より難化。 満点は可能だが、 前年度より時間を要するだろう。 リード文をじっくり読む。 「病弱な主人公が、 夫がくれた手提げ籠で、 ピクニックすることを夢見る」 話なのだとマインド・セットする。 次に設問に目を通し、 問5から「主人公が子供を見守る時の 心情に特に注意して読もう」と留意。 さらに問5・問6に関しては、 選択肢にまで簡単に目を通し、 「かァかァ」や「運動会」や 「美術品」や「とや、とや」や 「あんよ」や「22行目…
2023.02.18
【共通テスト現代文10年分講評ー7】2017年①
【2017年 評論文】 【小林傳司 『科学コミュニケーション』】 【全体講評】 やや難。30分。 「難」に近い「やや難」。 前年度は20分程度で満点が狙えたが、 今年度は下手すると30分ほどかかり、 しかも満点は至難。 特に問4が難しい。 「適当」な選択肢はいくつかある。 「最も適当」な選択肢を選ぶ (相対的判断をする)のが 現代文という科目の難しさ。 読解の際は必ず手を動かすこと。 大事だと思う部分には線を引く、 キーワードだと思う箇所は丸で囲む。 それらを繋いで読み直せば、 それらがそのまま その文章の要約文になっている、 これが現代文の学習の ひとつの到達点だ。 最初はピン…
2023.02.17
【共通テスト現代文10年分講評ー6】2016年②
【2016年 小説】 【佐多稲子『三等車』】 【全体講評】 標準。20分。 1950年代の古い小説だが、 ストーリーは明快。 前年の「石のような孤独」 に比べると易しくなった。 本年のように、 「評論文では時代の最先端の テーマを読み解く」、 「小説では過去の時代と人々に 想像力を馳せる」 というコンビネーションは とても良いと思う。 「電車に等級が存在する」 「切符を闇(取引)で購入」 などの現代とは異なる環境を、 客観的に読み取っていきたい。 紛らわしい選択肢もなく、 力のある受験生なら、 1…
2023.02.16
【共通テスト現代文10年分講評ー5】2016年①
【2016年 評論文】 【土井隆義 『キャラ化する/される子どたち』】 【全体講評】 標準。25分。 14年の馴染みのない 「漢文」がテーマの文章、 15年のやや難しい 「ネット・歴史・啓蒙」の文章、 に比べ、読み易い文章。 共通テストはこのレベルで 毎年平均化していいと思う。 2年続けて時代の最先端のテーマ。 文章量も例年に比べると少なく、 力がある受験生なら 20分もあれば満点が取れるだろう。 「現代の若者の戦略的キャラ化」 「キャラ化も悪いことじゃない」 という論旨が一気通貫しており、 非常に簡潔明快な文…
2023.02.15
【共通テスト現代文10年分講評ー4】2015年②
【2015年 小説】 【小池昌予『石を愛でる人』】 【全体講評】 やや難。25分。 孤独な心を石に喩えた、 随筆に近い純文学。 ストーリーが解り易かった 2014年度より難化。 評論文同様、問6を両方 正解するのは中々骨が折れる。 一般的には ネガティブイメージな「孤独」が、 この文章ではむしろ ポジティブなイメージを 付与されていることを読み取れたか。 【本文要旨】 石を愛でる、 亡くなった妻の愛を惜しむ、 「アイセキカ」山形さんと、 同じく石が好きで孤独な私の、 心の交流。 「言…
2023.02.14
【共通テスト現代文10年分講評ー3】2015年①
【2015年 評論文】 【佐々木敦『未知との遭遇』】 【全体講評】 やや難。25分。 まずタイトルに目を通す。 次に設問にざっと目を通す。 今回の場合、 たとえば「問6」はその都度解いてく。 そして「問5」に目を通すことにより、 「啓蒙」が本文のテーマだと留意し、 読み進めていく。 評論文の場合は、 各設問は基本的にはその都度解く。 しかし根拠に迷うようなら、 深追いせず、いちど保留し、 先を読み進めてから立ち戻る 臨機応変さを持ってほしい。 今回は、 ネット社会と歴史・啓蒙を紐づけて 「ゼロ年代」を論じた、最…
2023.02.13
【共通テスト現代文10年分講評ー2】2014年②
【2014年 小説】 【岡本かの子『疾走』】 【全体講評】 やや難。目標20分。 これぞ共通テスト(センター試験)、 じっくり取り組めば「標準」だが、 時間がタイトなので「やや難」。 理想はある程度抑揚をつけた速読だが、 あまりに速読に走ると乱読と堕し、 大事なキーワードを見過ごしてしまう 可能性を孕むジレンマで本当に難しい。 小説の基本的な読み方。 「ある出来事」をきっかけに、 主人公の気持ちが変化する。その心情の 「ビフォーアフター」を読み取る。 しかしその心情は 「悲しかった」などとは 直接には描写されないことがほとん…
2023.02.12
【共通テスト現代文10年分講評ー1】2014年①
【2014年 評論文】 【齋藤希史『漢文脈と近代日本』】 【全体講評】 やや難。目標25分。 話題の中心が「漢文」というだけで、 「現代文も漢文かーい」と、 漢文ぎらいの生徒はゲンナリしたハズ。 「寛政異学の禁」 「士大夫」「科挙」など、 最低限の日本史や世界史の知識も必要。 吟味を要し、時間だけ食う、 表現の特徴を問う問6も受験生泣かせ。 日本文化の根源には 中国文化(漢文)があり、 当時の日本の知識階級にとって 漢文は必須の素養であった。 そして近世の士族階級のみならず、 明治期の知識人 (福沢諭吉や夏目漱石など)も、 …
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