進路の話をしていると、
「何かができないと仕事にはつけませんか?」
「仕事に就くために何かできる事を証明する必要があるんですか?」
と不安そうに聞かれることがあります。
ここでまず大事な事があります。
すべての仕事に、ポートフォリオ(作品集)が必要なわけではありません。
そもそもポートフォリオとは、スキルや実績を目に見える形で証明するものの事を言います。
「あなたは、実際に何ができますか?」を、言葉ではなく証拠で見せるためのものです。
絵、プログラム、文章、授業案など、仕事の中身が目に見える職業では、それが判断材料になります。
しかし社会には、
仕事の性質そのものが、作品で判断できない職業もはっきり存在します。
それが、今回扱う仕事になります。
警察官、消防官、市役所職員などの公務員は、基本的に何を作ったかでは評価されません。
なぜなら公務員の仕事は、個人のアイデアや表現よりも、ルールを守り、組織として正しく動けるかが最優先されるからです。
警察官であれば、
法を守り、命を預かり、感情で動かない冷静さが必要です。
消防官であれば、
現場での判断力と体力、そして集団行動が命になります。
市役所職員も、
自分の意見よりも制度や手続きを正確に運用する力が求められます。
そのため選ばれ方は、とてもはっきりしています。
筆記試験、面接、体力検査、年齢条件。
ここを通過できるかどうかがすべてです。
ポートフォリオが不要なのは、評価される能力が、試験で測れるものだから。
というだけの話なのです。
工場の製造ラインで働く仕事も、ポートフォリオは基本的に必要ありません。
製造の現場で求められるのは、自分なりの工夫や独創性ではなく、
決められた手順を、毎日、正確に続ける力です。
ここでは、
自分はこんなことができます!
よりも、
同じ品質を保ち続けられるか!
が重要になります。
そのため、採用で見られるのは、
過去の作品ではなく、
生活リズム、体調管理、遅刻や欠勤の少なさ、協調性です。
この仕事では、
あなたが何を作ったかではなく、どう働き続けられるかが評価されます。
電気、水道、ガス、鉄道、ゴミ処理など、
社会の基盤を支える仕事をインフラ系現業と呼びます。
これらの仕事では、個人の判断や表現が前に出ることはほとんどありません。
むしろ勝手な判断は、事故やトラブルにつながります。
だからこそ求められるのは、資格、訓練、ルール遵守、そして継続力です。
たとえば電気や水道の仕事では、資格を持っているかどうかが入口になりますし、
現場に入ってからは長い時間をかけて安全確認を学びます。
ここでも、ポートフォリオは意味を持ちません。
安全に仕事をしっかり任せられる人かどうか。
それだけが評価基準になります。
看護師や電気工事士のような仕事は、進路の中でもとても分かりやすい世界です。
資格がなければ、やる気があっても、能力があっても、仕事そのものができません。
逆に言えば、資格を取った瞬間に、
「この仕事ができる人」として扱われます。
このタイプの仕事では、作品を見せるより、資格を持っているかどうかがすべてです。
ただし、この道には注意点もあります。
資格職は強い反面、その仕事を辞めたあと、別の職種に移るのが簡単ではありません。
だからこそ、
安定しているから!!だけで選ぶのは危険です。
ポートフォリオがいらない仕事は、楽な仕事でも、考えなくていい仕事でもありません。
ただ、評価されるポイントが、別の場所にあるというだけです。
試験で選ばれる仕事
資格で選ばれる仕事
規律や継続力で選ばれる仕事
こうした世界では、作品よりも、日々の積み重ねがそのまま評価になります。
だから進路を考えるときは、何が評価される世界なのか。を知ることが大切です。
進路は、努力の量ではなく、努力の方向で結果が変わります。
ポートフォリオが必要な道もあれば、試験や資格がすべての道もある。
大事なのは、知らずに選ぶことではなく、仕組みを理解したうえで選ぶことです。
それが、あとで「こんなはずじゃなかった」と後悔しない、
進路の作り方です。