最近、高考(ガオカオ)について書きましたが、
今日はその背景にある学習塾規制の話を、もう少し深く見ていきたいと思います。
中国は2021年、学習塾への大きな規制を実施しました。
営利目的の学習塾は事実上禁止。
更に、宿題も減らすように学校へも指導が入りました。
なかなか強烈な政策です。塾へ行けなくなる子が増える。
教育費が家庭の負担にならないようにする事が一つの目的です。
こうした動きは、中国版のゆとり教育とも言われています。
この規制の背景には、中国の深刻な出生率の低下があるようです。
教育コストが高すぎる。
大学卒業までに必要な教育費は約4,000万円。
学費が高すぎる。
学費が高く、経済も不安定になれば若い世代は子どもを持ちたいと思えない。
そして、少子化が国家レベルの問題になっているようです。
そこで始まった政策の一つが、学習塾への営業規制です。
※主要科目の営利目的の学習塾の禁止、新規開設の制限など
しかし、学習塾に規制をしても、本来の需要は消えませんでした。
裏家庭教師が増えたり、学校の先生が副業で指導をしたりの闇営業は増加しているようです。
規制をかいくぐり、形を変えて受験競争は続いているようです。
皮肉な事に、規制をくぐりぬける経済力がある人無い人で、教育格差は更に広がるのではないかと言われています。
制度が変わっても、根本的な問題は消えないんですね。
中国は学習塾規制が強化されても、高考(ガオカオ)の受験者数は増加しています。
つまり、これは受験競争や就職競争が更に激化されているという事も考えられます。
コロナ過も重なり世間では、仕事を無くす人が増え、更に貧困化が進んだとも言われています。
そして、ここからが更に少し切ないところで、中国経済自体が不安定になりつつあります。
若者たちは将来が見えない。いい会社に入れなかったらどうなるんだろう。
ここで受験競争に負けたら終わりなのか?
そんな空気が広がっているのではないでしょうか。
競争は確かに必要かもしれませんが、
競争に負けたら生き残れないような社会不安は、あまりにも厳しい。
教育の場が安心ではなく不安の源になってしまうと、子どもたちの表情から余裕が消えていきます。
実際、学習塾が規制されても、高考(ガオカオ)を受ける人数は増えています。
これは、つまりゆとり等ではなく、学歴社会が変わっていないどころか、
更に受験戦争が激化してしまっているのではないでしょうか。
良い大学を出ないと良い仕事に就けない。
この前提がそのまま残っている。
だから、塾があろうがなかろうが、若者の不安は続くし、競争は止まらない。
私は、こういう状況を見るたびに思います。
教育は、本来人生の支えであってほしい。
生徒にはそれぞれ個性があるので、勉強が得意な子もいれば苦手な子もいる。
だからこそ、好奇心から学びたいと思える事こそが、教育の本質であって欲しいと思います。
不安や危機感をあおるような競争ではなく、教育は安心して未来を描けるための力になるべきだと思うんです。
国が違っても、若者を取り巻く問題はつながっているように感じます。
格差が広がらないように。貧困が連鎖しないように。競争に負けた人にも居場所があるように。
そんな政策が、どの国でも必要なのではないでしょうか。
安定した社会というのは、勝った人だけが安定を手にする事で、成立するものではありませんよね。
誰もが生きていける場所を作る事。そんな場所をみんなで作り上げていく必要があるように思います。
教育はその入り口のひとつ。だからこそ、中国の動きは日本にとっても重要なヒントになる気がしています。