教室ブログ

2019.09.28

こんばんは、六十谷校の川口です。

 

ブライアンズ・ヘイズの「ベッドルームで群論を」読んでおもしろいエピソードがいくつかありました。

日常に数学を使うおもしろい事例として、著者はマットレスのへこみが気になるらしく、定期的にひっくり返してでこぼこをならし、偏りがない状態に保つために黄金律を考えました。マットレスには眠るのには適した面が2つあり、それぞれの面の置き方はどの短辺をヘッドボードに向けるかによって2通りあるので、全部で4つの配置が考えられます。長方形の対称軸は3本なのでどの順で回転を加えることで元の状態に戻るかを抽象化するために、ベッドへの回転操作を群とみなして乗積表を作っています。しかし、2つの操作を組み合わせても1つの操作で置き換えることができ、黄金律が作れないことが分かります。似た事例として、車のタイヤの位置を取り替える作業については黄金律が存在します。マットレスの方はクライン4群、タイヤの方は巡回4群と分類され、どちらも2つの操作を続けて行うときに入れ替えても結果は同じなので可換群となります。これを複雑にしたものがルービックキューブなので群論で解析を行っている研究が見られます。昔流行ったこの立方体を揃えることで数学的思考力を養うことができるようです。

別の章では戦争についての統計をとっていたリチャードソンが隣国との交戦について距離を測るのではなくトポロジー的に、境界の長さを測って研究を行いました。割りコンパスの設定によって10ミリ刻みでは100歩あった海岸線が、1ミリ刻みにすると1000歩あるとは限らず、目盛りを小さくすることで海岸線の凸凹を忠実に辿ることになり、測定値は長くなります。この観察結果についての論文にブノワ・マンデルブロが刺激を受けたことで、フラクタル理論が誕生することになりました。考えてみると計算でできそうに見えても、実際に計測や実験を行うと結果が異なることについては、誰しも経験があると思います。微視的な要因は意外に大きな影響を及ぼします。精神が身体に影響するのも僅かな電気信号からはじまります。

群を使って結晶構造を研究する結晶学も重要な分野で、創薬、建築からチョコレートの形に至るまで生活に関わりが深いものです。自分の視野を広げるためにも分類する道具は使っていけるようにしたいと思います。

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