教室ブログ

2019.01.31

量子力学

こんばんは、Wam六十谷校の川口です。
森田邦久さんの量子力学の哲学を読みました。
量子力学についての本は何冊か読みましたが、知ったのは大人になってからで、その時はミクロな世界の限定的な出来事で、生きていく上でほとんど関係がない現実という認識だったのですが、実は私たちの生活に欠かせないパソコンや携帯電話などにもその技術が応用されているようです。量子力学の原理は未だに不明ですが、その結果はほぼ完全に予測できます。
量子力学の実験のおもしろいところは、測定されるまで状態が分からず、両方が存在しているところです。電子のスピンが測定されるまで決まった値をもっていないように、観測することによってどちらかが決定します。量子力学の解釈では、測定に伴って波動関数の収縮が起こるとする仮説(射影公理)を認めないといけないものが多くあり、射影公理は正式に認められたものではないのですが、仮定として認める場合が多いです。
量子力学の哲学における4つの課題として、
・測定前の物理量は確定した値をもつか(実在するか)
・非局所相関はあるのか(空間的に遠く離れたものどうしが一瞬で影響を与え合うのか)
・射影公理をどう扱うか(状態の収縮をどう扱うのか)
・粒子と波の二重性をどう考えるか
というものがあります。

 

有名な事実として、光は測定していないときは波として振る舞い、測定すると粒子として振る舞うというものがあります。シュレディンガー方程式は「波として」振る舞う量子力学的系を決定論的に記述できますが、「粒子として」記述しようとすると、初期条件をどれだけ正確に定めても、その後系がどのように振る舞うかは決定できません。マッハ・ツェンダー干渉計と呼ばれているもので実験を行うと、干渉計の経路の組み合わせを計算するとありえない数値、-1の確率が出てきます。日本の実験グループが時間対称化された量子力学の予測どおりになることを確かめています。また、遅延選択実験では未来の結果が過去に影響するような解釈ができる現象も確認されています。
また、量子力学では
・量子力学的系における物理量は測定していないときでも明確な値をもっている
・もし量子力学的系における物理量が明確な値をもっているならば、測定状況とは独立に明確な値をもっている
・量子力学は経験的に正しい(実験と整合的である)
の3つが同時に満たされることがないというコッヘン-スペッカーの定理があり、著者としては、因果的記述と時空間的記述は「相補的」な関係にあり、古典的世界の住人である私たちは量子的世界を直接的に理解することはできないから、粒子的記述(時間的・空間的記述)、波動的記述(因果的記述)を合わせてその概観を掴むしかないのだということです。二次元に生きる生物が三次元的な視点をもつことはできないことは、わたしたちが別の次元を見ることができないために、不思議な現象に映るのだと思います。また、著者は「過去の状態と同等に未来の状態が現在の状態に影響を与える」という解釈が量子力学の哲学的問題の解決にとって有効だと考えています。
いくつかの解釈が紹介されていましたが、隠れた変数理論にあたる「粒子の初期位置」がある軌跡解釈や、そもそも状態は収縮しないとするエヴェレットの多世界解釈は不可解な量子力学を理解しやすいものだと思います。多世界解釈は確率をどのように解釈するのかという問題点があります。私たちの側の情報不足で確率という不確かなものでしか捉えられないという確率の無知解釈ですが、各世界に進む可能性が等しいことは正当化されておらず、観測することも難しいです。また、多精神解釈というものもあり、これだと物理的な世界が分岐してしまうことがなく、はじめから連続無限にある心が測定によって分岐してことを受け入れれば通ることになります。つまり、測定によって物理量が明確な値を得ることができるように思っているのは幻想だという考えです。他に、様相解釈という位置も含めたすべての物理量が状況依存的であるものなどありますが、いずれにせよ測定をを伴う実験には観測による状態の収縮が影響するため、弱い観測という量子状態の重ね合わせを壊さずにその状態を測定する観測手段が最近用いられるようです。

 

もう1冊、近藤龍一さんの「12歳の少年が書いた 量子力学の教科書」という本も続けて読んでいます。自分は初学者として何冊か読んで止まってしまっていましたが、彼は独学で調べて中学受験の二日後に中間書と呼べるレベルまで書き上げたので、彼の量子力学への興味と理解を追ってみたいと思います。

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