教室ブログ

2018.06.30

新刊

こんばんは。Wam六十谷校の川口です。

 

結城浩さんの数学ガールの新刊を読みました。ポアンカレ予想が主題ですが、それに至るまでの道のりが丁寧で惹きつけられます。

時々クイズなどでも見かける一筆書き(ケーニヒスベルクの橋の問題)はオイラーが最初に証明したことが知られています。オイラーは何気ない一筆書きの問題に数学を見つけました。論文内でも”位置の幾何学”という表現を引用しています。そして後に位相幾何学と呼ばれるようになるこの分野はポアンカレが立ち上げました。

グラフが一筆書きできるならば、次数が奇数になる頂点は0個または2個である(ただし、頂点と辺の個数はどちらも有限とする。また、連結グラフのみを考えるものとする)と作中でも証明していますが、グラフ理論の道を開いたこの問題は美しくない証明とされた四色定理やNP困難ながらも意外と解ける巡回セールスマン問題とも繋がっています。

それと関連して表裏の区別がないメビウスの帯が出てきます。よくデザインで使われていますが、一本の帯を繋げて作ると考えると半ひねりの回数が偶数なら輪、奇数ならメビウスの帯になります。このような表裏の区別がないこれは向き付け不可能性と表現されます。これは閉曲面(無限に広がらず境界のない曲面)と呼ばれるもので代表的なものは球面(中身のない球)で、トポロジー(位相幾何学)で閉曲面を分類する際は伸縮した変形をすべて同じものと見なします。わたしもメビウスの帯がなぜ不思議なのかは分かっていたつもりで本質を捉えていなかったように思います。

また、球面と異なる閉曲面にはトーラスと呼ばれるドーナツの表面の形状などがあり、これらの向き付け可能な閉曲面は穴の数で分類できます。よくコーヒーカップとドーナツは同じだと表現されたりします。メビウスの帯の3次元版はクラインの壺と呼ばれ、3次元の立体として表現できません。不思議なことに、メビウスの帯を貼り合わせるとクラインの壺ができます。続いて、正方形でそれらの展開図を考えます。メビウスの帯の展開図で残った2辺を逆向きに貼り合わせると射影平面(平面に無限遠点を加えたもの)ができ、n個の穴の空いた図形は球面とn個のトーラスの連結和ともいえます。閉曲面の分類(連結和)として、向き付け可能なものは球面とトーラスn個の連結和で、向き付け不可能なものは球面と射影平面n個の連結和になります。

幾何学で合同、相似といわれる基本的概念がありますが、トポロジーでは同相がそれに当たります。同相を定義するには同相写像を定義する必要があり、それを定義するために連続写像を定義する必要があり、関数が連続であることをε-δ論法を使って表現しています。

ここから距離の世界から位相の世界へ見方を変えていきます。開集合(実数直線の開区間の一般化)と開近傍(与えられた点を含む集合)を定めると連続が定義でき、それを使って同相を定義します。位相構造だけでなく微分構造も入れる必要があり、同相写像で変化しない量を位相不変量と呼びます。さきほどのケーニヒスベルグの橋の問題など、グラフにオイラー閉路が存在するかどうかはグラフ同型についての不変量で考えられます。
ここでユークリッド幾何学に触れています。ユークリッド幾何学は平行線公理を含む五つの公理を出発点として作られた体系です。平行線公理が成立するかどうかで議論されましたが、これを証明した人はおらず、19世紀にボヤイとロバチェフスキーが非ユークリッド幾何を見つけ出しました。これは双曲幾何学と呼ばれています。

これらは以下のように分かれます。

・球面幾何学(非ユークリッド幾何の特殊な形) 直線l外の点Pを通過して、lと交わらない直線は存在しない。

・ユークリッド幾何学             直線l以外の点pを通貨して、lと交わらない直線は1本存在する

・双曲幾何学                 直線l以外の点pを通過して、lと交わらない直線は2本以上存在する

平行線公理をスタートとした幾何学の体系付けは平行線公理以外の公理を持ってきても幾何学が作れるという方向に歩を進めました。そして平行線公理への拘りから離れ、計量によって無数の幾何学が作れることをリーマンは示しました。その研究対象はリーマン多様体と呼ばれています。

これ以降多様体を群でつかまえる方向へと話が進んでいきます。

 

私の研究の目標としたのは、

方程式が根号によって解けるためには、
どういう特質をもてばよいかということであった。
純粋解析の問題のうちでこれほど扱い難い、
またおそらくこれほど他のすべての問題から孤立したものはないであろう。
                   ――エヴァリスト・ガロア――

 

ガロアの素敵な台詞です。続きはまた書いていきたいと思います。

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